総合内科

統括医長 山本智清

1.ビジョン

「24時間断らない救急」を実践するが故に受診する、様々な背景をもつ多様な内科系疾患の診療を、ER~入院~退院までシームレスに行う。

 

 我々職員の誇りでもある「24時間断らない救急」を実践するためには、ERを受診する複雑な内科系疾患にも対応していかなければならない。さらに当院ERは従来からの地域における位置づけの問題もあって、発熱が主訴となる患者でも「1週間持続する発熱」や「発疹を伴う発熱」、「海外帰国者の発熱」など、本来の救急医療の対象とは若干異なるような患者の紹介も多い。こういった患者の診療は救急医のみで行うには負担が大きく、そのため以前には、こういった患者の診療に時間をとられて、救急医が診療するべき患者の診療に支障を来すこともあった。また、入院となった内科系疾患の患者をERから内科医に引き継ぐ際にも時として診療方針の一貫性が失われたりすることや、「バトンタッチ」に時間がかかって、病棟への入室が遅れたりする状況もしばしば発生した。

 これらの状況に対応するためERでの内科系疾患の診療および、その後の入院診療をシームレスにおこなうための部門として2017年に総合内科が立ち上げられた。総合内科スタッフは消化器、小児科など、それぞれサブスペシャリティをもって、サブスペシャリティ領域の診療もおこないつつ、ERで内科系疾患の診療およびその後の入院診療を行っている。ERでの診療は、開業Drからの内科系の紹介および、夜間祝日にERを受診した内科系疾患のフォローといった患者が中心であり、入院での精査治療が必要となった場合でも、特殊な治療が必要なケース以外は当科で引き続き担当する。診断に難渋する症例も多く、昨年度はTAFRO症候群、ブルセラ症、CVID、などの稀少疾患の診療を経験した。

 当科のもうひとつの役割として研修医教育がある。総合内科をローテートしてくる初期研修医に対しては、週3-4回ERで指導医とともに診療を行い、入院を要する場合はそのまま継続して担当させている。研修医がローテートしてくる時期によるが常時5~10名程度の患者を入院で受け持ち、稀少症例や教育的な症例に関しては学会発表を行うようにしている(昨年度も、当科の指導下に初期研修医6件、専攻医1件の学会発表を行い、2名の初期研修医が表彰を受けている)。ローテート研修医だけでなく、初期研修医全体への教育として、毎昼30分を使って総合内科カンファレンスを行い、臨床医としての思考方法がより早く確立できるよう指導しているが、彼らへの指導を通じて我々指導医側も指導方法に通暁するようになってきている。

 

2.サービス内容

 平成29年度は、3名の専属スタッフ医師で運営した。平日日中の内科系ER受診患者の診療および、そこから入院となった症例の病棟診療を主たる業務としたが、週2単位の健診での上部消化管内視鏡、病院での精密検査としての上部消化管内視鏡1単位、および下部消化管内視鏡検査2単位を担当した。

 初期研修医に対する教育指導として、毎日12時30分~13時00分までカンファレンスを行っている。参加者は初期研修医をはじめ、各科後期研修医、各科指導医、実習医学生など多彩であり、また、提示される症例も内科一般だけでなく、外傷から小児科と幅広く、研修医のみでなく、我々指導医層も多くのことを学べる場であると自負している。平成30年度もほぼ毎日開催した。

 

総合内科 昼カンファレンス症例一覧(平成30年度・記録分のみ)

Dr

診断

4/2

42

F

巨大子宮筋腫による膀胱圧迫

4/5

70代

M

守安

膀胱癌からの持続性少量出血による貧血

4/10

15

M

藤岡

潜在性2分脊椎症

4/11

33

F

藤岡

卵巣出血

4/16

8

M

内坂

急性副鼻腔炎

4/17

78

M

内坂

ウイルス発疹 or 成人スティル病

5/1

80

F

小野寺

副鼻腔炎

5/2

 

 

眞船

慢性硬膜下血腫

5/7

37

M

田丸

急性膵炎

5/8

48

F

田丸

扁桃周囲膿瘍

5/9

84

M

山本

右腎癌による下大静脈腫瘍栓

5/10

60

M

内坂

下垂体腺腫+下垂体卒中

5/14

96

M

磯部

破傷風

5/16

80台

F

田丸

急性胆嚢炎

5/17

36

F

田丸

正常妊娠

5/18

66

M

内坂

急性前骨髄球性白血病(APL)

5/21

82

M

田丸

大腸憩室出血

5/22

89

F

秋元

低Na血症

5/23

59

M

山岸

精巣上体炎

5/24

54

M

山本

憩室穿孔、腹膜炎(free airあり)

5/25

68

F

山本

偽膜性腸炎

5/28

88

M

五味

VA解離

5/29

88

F

内坂

後天性血友病A

5/30

56

F

成澤

脊髄炎

6/1

18

F

内坂

両側卵巣腫瘍(漿液性嚢胞+成熟奇形腫の疑い)

6/4

23

M

梶川

甲状腺機能亢進症+低K血症、周期性四肢麻痺

6/6

55

M

田丸

一過性全健忘

6/7

32

M

田丸

上行結腸憩室炎

6/8

41

M

内坂

十二指腸潰瘍+腹腔内膿瘍

6/11

75

F

祥寛

尿路感染症による?血圧低下で脳灌流低下したため

6/12

 

 

甲状腺機能亢進症

6/13

 

 

田丸

F-H-K

6/18

76

M

山岸

超急性期脳梗塞

6/19

28

M

ウイルス性肝障害疑い

6/20

66

F

山岸

急性心外膜炎(膠原病関連)

6/21

43

F

腎盂腎炎

6/26

46

F

内坂

多発性硬化症の疑い

6/27

32

M

山岸

CMV感染症(伝染性単核球症様疾患=IM like illness)

6/28

75

M

山岸

偽膜性腸炎

6/29

82

M

高田

NSAIDs腎障害

7/2

85

F

田丸

閉鎖孔ヘルニア

7/4

28

M

田丸

大動脈解離

7/5

67

F

山本

出血性胃潰瘍

7/6

87

M

寺川

(壊死性)腸管気腫症

7/9

71

M

内坂

脚気(ビタミンB1欠乏症)

7/10

37

F

磯部

片頭痛ないし薬物乱用性頭痛 

7/12

46

F

小野寺

熱中症

7/17

55

M

内坂

絞扼性イレウス

7/18

44

M

山本

腓腹筋断裂

7/19

62

M

魚谷

虫垂炎

7/23

83

M

内坂

医原性甲状腺機能低下症

7/24

31

F

五味

妊婦の創

7/25

62

M

祥寛

DKA

7/26

91

F

蜂窩織炎

7/31

33

F

山本

UC…とBasedaw病

8/1

49

F

寺川

卵巣腫瘍の茎捻転

8/2

54

M

五味

septic pulmonary emboli

8/6

 

 

魚谷

子宮留膿腫

8/7

100

F

成澤

高Mg血症による意識障害か、傍腫瘍神経症候群か

8/8

20

F

今井

脱水+甲状腺機能亢進症

8/9

14

F

成澤

急性虫垂炎

8/10

20

F

内坂

ウイルス感染+甲状腺炎

8/13

70

M

内坂

オプシーボによるHyper prognositic disease+IP

8/14

 

 

今井

CD腸炎

8/15

22

M

山本

ALPE

8/16

 

 

魚谷

低カリウム血症

8/20

69

M

守安

横紋筋融解症(CK 8万)

8/22

60

M

山本(祥)

一過性全健忘

8/27

81

F

山本

上部消化管出血(出血性胃潰瘍)

8/28

 

 

高田

胆管炎、 アスベスト肺はDummy

8/31

 

 

 

結核性関節炎

9/4

79

F

魚谷

CJD

9/5

69

M

今井

TdP (低Ca、低Maによる)

9/6

50

F

高田Dr

上気道閉塞

9/7

 

 

 

Herpes Zoster   /    Reccurent cellulitis

9/10

38

M

秋元

風疹

9/11

88

F

成澤

SAH

9/12

88

F

五味

甲状腺機能低下症

9/13

18

M

山本

十二指腸潰瘍穿孔

9/20

81

F

内坂

急性骨髄単球性白血病(FAB M4)

9/25

 

M

守安

急性虫垂炎

9/26

 

 

藤岡

SAH

9/27

 

 

内坂

帯状疱疹(授乳婦の)

10/3

 

 

秋元

CSDH 急性増悪

10/4

 

 

山本

前立腺炎

10/9

75

M

秋元

帯状疱疹

10/15

38

F

寺川

両側 アキレス腱炎

10/17

80

M

山岸

SSS

10/18

90

F

内坂

癌患者さんの除痛

10/22

77

M

永井

HCC rapture 

10/23

8

M

山岸

SMA症候群

10/24

39

M

磯部

NMO(3椎体以上はないが、抗AQP4抗体陽性)

10/25

79

M

寺川

肺癌末期

10/29

94

F

田丸

高カリウム血症、腎機能悪化

10/30

84

M

永井

SMA血栓症(部分閉塞)

10/31

54

F

今井

穿孔性虫垂炎

11/1

97

F

秋元

慢性心不全

11/6

60

F

秋元

ドパミン製剤の副作用

11/7

70

M

山本

IgA血管炎(Schonlein-Henoch紫斑病)

11/8

40代

M

寺川

肺炎球菌性肺炎(侵襲性肺炎球菌感染症)

11/10

40代

M

寺川

憩室炎からの大腸菌菌血症

11/11

 

 

内坂

Basedaw病

11/12

89

F

中川

上行結腸穿孔 

11/13

68

M

寺川

COPD急性増悪

11/20

60

M

今井

胆嚢炎(穿孔ないし切迫穿孔)

11/21

 

 

山本 

感染症勉強会に向けて 知識の整理に

11/22

43

M

寺川

亜急性甲状腺炎

11/26

60

F

中川

肝嚢胞内出血

11/27

80代

M

磯部

Toddの麻痺、心不全、肺炎

11/28

 

 

藤岡

消化管出血

11/29

 

 

磯部

強迫神経症外

12/3

40

M

今井

膀胱壁と接する腫瘍

12/4

69

M

中川

突発性難聴

12/5

87

M

田丸

高Ca血症 高Mg血症

12/10

88

F

渡邊

AAA切迫破裂

12/17

77

F

成澤

複雑性尿路感染症(単腎±尿管結石)

12/18

73

F

山岸

芍薬甘草湯による偽性アルドステロン症

12/20

 

 

秋元

ヘノッホシェーンライン病 

12/26

70代

 

磯部

アカシジア

1/7

43

M

山本

胃アニサキス症

1/8

 

 

守安

肺結核

1/9

 

 

守安

悪性症候群

1/15

40

M

秋元

UC増悪

1/16

63

M

山本

胃潰瘍

1/21

79

F

山本

AMI

1/22

 

 

内坂

肺塞栓

1/24

30

M

内坂

周期性四肢麻痺、バセドウ病

1/28

85

M

内坂

ラクナ梗塞

1/29

84

M

山岸

レジオネラ肺炎

1/30

20代

 

田丸

GAS咽頭扁桃炎 / 伝単

1/31

39

M

内坂

内ヘルニア

2/5

14

F

田丸

卵巣腫瘍の茎捻転

2/7

55

M

山本

化学療法中の発熱・FN

2/11

 

 

山岸

急性胆嚢炎

2/12

44

F

山岸

バリウム誘発虫垂炎

2/14

15

M

内坂

縦隔気腫

2/18

64

M

山岸

硬膜外膿瘍

2/26

40代

M

内坂

甲状腺機能亢進症(Basedaw)

2/27

91

F

田丸

特発性動眼神経麻痺

2/28

71

M

山岸

皮膚筋炎(TIF1-γ抗体陽性)

3/4

81

F

田丸

左下肢壊疽

3/11

 

 

中川

結石性膵炎

3/12

69

F

山岸

RCVS

3/13

78

M

田丸

心原性肺水腫 疑い

3/14

79

F

山本

肝性脳症(シャント=猪瀬型脳症)

3/15

79

M

山本

ACS(下壁梗塞)

3/18

83

F

内坂

消化管穿孔(大腸癌+憩室穿孔)

3/19

 

 

田丸

耳下腺炎

3/20

85

F

内坂

自己免疫性肝炎

3/22

44

F

田丸

MS疑い (or NMO)

3/28

74

F

内坂

右頭頂葉の脳梗塞(分水嶺梗塞?)

3/29

74

F

今井

甲状腺癌(未分分化)肺メタ+Horner synd.

 

3.構成・提供体制 (2016年4月時点)

専属スタッフ3名

 

院外資格保有者数:(重複あり)

総合内科専門医2名

消化器病学会専門医:1名

小児科専門医:1名 

消化器内視鏡学会専門医2名

 

外来体制:月曜日~金曜日のER診療

入院体制:主病棟は4S

 

新規入院カンファレンスと回診…平日朝8:30 ~10:00 毎日 

内科合同カンファレンス …毎月曜日

総合内科カンファレンス…平日毎日昼12:30~13:00

救急科・総合内科合同カンファレンス…毎木曜日8:15~

 

4.主要設備・機器

総合内科として所有するものはなし

 

5.実績 (2017年度)

ER診療 初診平均 10-20人/日

入院診療 500人/年

 

<学会発表>

…上記3題 第115回内科学会 総会  2018年4月

 

…第143回日本内科学会信越地方会 2018年6月